名古屋の探偵さんと知り合ったのは、約1年前。
ちょうど、保険屋さんに限界を感じ、退職しようと決意したころだった。
掛け持ちでしていた、広告募集のバイト。
そこで知り合った人が、抱き合わせとして、営業のかたわらにチラシ配りをしていたのだ。
広告は、契約がとれると、その広告を掲載している間は月々の収入につながるけれど、パンフレットを配って説明する件数の割りに、ほとんど仕事が入ってこない。
しかも。
そのパンフレットに自分の氏名を記載してくれるのだけれど、その日に契約がとれないと、あとで連絡する先が会社宛ての電話番号になっているので、もし注文が入ったとしても本当にわたしに連絡してくれるのか、わかるものでもない。
もし、契約が入らなければ、タダ働きとなってしまう、ある意味かけのようなバイトだ。
どうやら、他の営業に回りつつ、狙いを定めたところへパンフレットを持ちこむ人が多いみたいだ。
あと、知人に勧める、とか。
なんのツテもないわたしには不利な仕事。
その愚痴を言いつつ、配れば配っただけ、バイト料がもらえる仕事ないかなぁ。
と、主婦の友達に愚痴ったところ、以前お世話になったことがあるという探偵さんを紹介してもらったのだ。
嫌じゃなかったら、と断ったうえで、事務所へ行くことに。
尋ねた先は、綺麗なビルの中2階。
エレベーターを使わずに、階段を上がってすぐのところに自動ドアの入り口がある。
おそるおそる入ると、角の事務所なので、窓からの光がたくさん入り、想像していたよりかなり明るい雰囲気だったのだ。
奥から出てきたのは、わたしよりひと周りくらい年上の男性。
奥の応接室、と言っても、パテーションでくぎられていて、ソファとテーブルが置いてあるだけのスペースだったのですが。
そのソファに座り、正面の探偵さんをまじまじと見てしまった。
正直な感想は、この人が探偵さん?
という失礼なもの。
これが、わたしと探偵さんとの出会いでした。 |